Concept

私の哲学

厚生労働省によれば、認知症になる方の数は、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)になると予測*¹されています。また、超高齢化の日本では、高齢者数が増え続ける中、介護職に携わる方の人数が不足していくと言われます。介護現場での人手不足への対応策の一つとして、今後、外国から介護を学びにいらっしゃる技能実習生*²などの外国人労働力に頼っていくという転換期を迎えています。そして、日本で暮らす外国人の数も増える中、将来、認知症のために介護が必要になられる在留外国人数も増える可能性があります。日本は当に介護の意味でも、国際社会となっていくと考えられます。人種の坩堝と言われるアメリカでは勿論の事、このように介護する側とされる側の双方での国際化が進む日本においても、私は、パーソン・センタード・ケア(Person-Centered-Care)と文化的謙虚さ(Cultural Humility)が、認知症介護の核となると考えています。

精神老年学者であるトム・キットウッドが貢献したパーソン・センタード・ケア、つまり、介護を受ける方を中心に考える認知症ケア*³という事と、医学博士のメラニー・ターバロンとジャン・マレー・ガルシアによって紹介された、医療従事者として自分自身の他文化に対する先入観や偏見を内省する、文化的謙虚さ*⁴を取り入れた、質の高い認知症ケアです。

認知症のご家族を介護されている方々へのカウンセリングやサポートは勿論の事、更に、外国人介護者を導入される施設や医療機関へ、また在留外国人の為の施設や医療機関へ、この文化的謙虚さ(Cultural Humility)の概念を紹介し、医療従事者の皆さんにワークショップ/トレーニングを提供していく事で、日本の認知症介護の分野に、微力ながら貢献していきたいと考えております。

*¹ 認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

*² https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147660.html

*³ Kitwood, T. The concept of personhood and its relevance for a new culture of dementia care, in: C. Baldwin, A. Capstick (Eds.). Tom Kitwood on Dementia: A Reader and Critical Commentary. Berkshire, England: Open University Press; 2007, p. 223–232.

*⁴ Tervalon M, Murray-Garcia J. Cultural humility versus cultural competence: a critical distinction in defining physician training outcomes in multicultural education. J Health Care Poor U 1998; 9(2):117–125